月1回、妻がいない夜がある。
それを皆は「真・母の日」と呼んでいる。
参加者はシン・ゴジラのような、否、妖艶で見目麗しく、熟しすぎて樹の枝から今にも落ちそうな熟女ばかりである。
二男が中高大一貫校だったので、その時の仲が良かった母親たちが、毎月のように集まっては飲んで食べてカラオケをやって親交を深めているのである。
ちょっと面白いのは、同学年の母親達だけではなく、先輩、後輩と学年を跨いでの母親達であることだ。兎に角、その結束力の強さには恐れ入る。
多分、こういう集まりが苦手という方もいることだろう。私もそのひとりだ。だから母親の集まりで良かったとつくづく思う。もしこれが父の会だったら、脱退もしくは除名処分になるはずだ。
さて、息子たちは卒業してからもう何年にもなるのに、いまだにこの会が続いているところをみると、これは「真・母の日」に名を借りたストレス発散の催しと私は見ている。
それはそれで良いのだが、この日の晩は、私も息子たちも自分たちで晩飯を考えなくてはならない。
今回もそれぞれが仕事から帰って来て、食事の準備というのも面倒なので、それじゃあ飯でも食いに行こうかという話になってしまった。というか、これがいつものパターンなのである。
長男と三男、そして私の三人で鳩首会議を行い、2対1で焼肉屋に決まってしまった。もちろん「1」は私である。
自宅からクルマで5分ほどの場所に、全国チェーンで有名な焼肉屋があり、結局あの店この店と言いながら最後は此処に落ち着いた。
料金別に設定されたコースを選択し、さて、戦闘開始である。タッチパネルにはラストオーダーまでの残り時間が表示される。
30代の長男と20代の三男は、タッチパネルを操作しては次々にオーダーしていくが、私はそんなふたりを見ているだけで腹が一杯になってくる。
次から次と網の上で焼けて行く肉を、息子たちは片っ端から平らげて行く。私も若い頃はこうだったのだろうなあと思いながら、奴らが取ろうとしない焦げた肉片を口に運んだ。
結局、焼肉と飲み物で1万5千円。ごちそうさまでしたと二人から言われてしまい、薄い財布が一層薄くなった。

その夜遅く、妻が帰宅。
「痛い、痛い」というからどうしたと聞けば、カラオケでタンバリンを担当。ノリノリで叩いていたら指の付け根に痣が出来てしまったと言って、青黒くなったその部分を見せられた。
満腹で動けない息子たち。打撲するぐらいタンバリンを討ち続けた妻。
私は「ふん」と一言だけいうと、読みかけの本に再び目を落とした。

コメント

まるこ
2019年6月28日10:04

ヒコヒコさん。それはステキな真の母の日でしたね。
しかし奥様、どれだけノリノリでタンバリン叩いたんでしょう!
余程楽しかったんでしょうね。奥様は社交的なんですね。素晴らしい結束力。
「原始女性は太陽だった…」平塚雷鳥ではありませんが、女性は逞しいですね。
ご近所付き合いでも奥様がメインでご主人様は余り前へ出ないご家庭多いですものね。

いづこのお子さんも親がいるうちは甘えますね〜〜!!
ここぞとばかり焼肉!!これはお財布に痛いですが…息子さんの気持ちわかりますよ。以前は私も「ご馳走様」の口でした。
若い方は召し上がる量も半端ないんでしょうね…。
若いって素敵!

アミ
2019年6月28日10:40

≫私は「ふん」と一言だけいうと、読みかけの本に再び目を落とした。

この最後の文章に、いたく感動しました。(笑)


マサムネ
2019年6月28日11:03

最近ウチは月に一度「息子に戻る日」があり、その二日間は「父親、夫」の肩書を一旦脱いで「息子」に着替えます(すこし語弊がありますが) 僕から見ても変な両親だなあ~と一度外の世界を見て思うのですが、それでもなんだか楽しそうだし、料理や家事をお休みできるので圏央道を走ったり、下道を夜中にドライブしながら帰っています。今回の休みで道の駅のスタンプラリーのノート?を400円で買ったので「八王子」「大利根」「古河」「北川辺」「境」辺りを押してこようかと思います。富士吉田で買ったのですが、隣の静岡は中部版らしく、「すばしり」「駿河小山」は別ノートでした(泣) メモ欄に押しましたけど。

マダムM
2019年6月28日11:13

「ふ~ん」じゃないのですね、「ふん」は我が家では許されない言葉です!!
ママ友の会は小規模ながらありますよ。学校の友だちと違って年齢も違うし、境遇も違うのが楽しいです!
焼肉、我が家ではガバガバ食べます。私は赤身ロース専門で〇人前は平気です(^^♪ 家族で行くと福沢さんが逃げて行きます、分身を何人も連れて(-_-;)

しゆい
しゆい
2019年6月28日17:43

「真・母の日」わたし気後れしそうなお集り…ですが
ヒコヒコさんの奥様がだいぶ楽しまれたご様子、
タンバリンの痕、わたしも経験あります!
さぞかし楽しまれたご様子。いいないいないいな~
「脱・人見知り」って思いました。
この出不精を卒業しないと人生損するばかり?かも。
焼肉ごはんでヒコヒコさんの懐は寂しくなられたようですが、
わたしお肉は超苦手! 焼き肉屋では野菜ばかり焼いてます。ふふ。

ヒコヒコ
2019年6月29日9:37

まるこさま
親の脛はしゃぶりつくせを地で行く我が家です。おかげでその脛もすっかり痩せ細ってしまいました。
果たして自分も親父にそうだったのか。あまり甘えた記憶はありません。今でこそああですが、昔はとても恐い存在でしたから、脛を齧った記憶がほとんど無いのです。
そんな事を言うと「齧りっぱなしだったベェ」と言われそうですが。
でも、若いってことは本当に良いものです。今になってよく分かります。

ヒコヒコ
2019年6月29日9:39

アミさま
そこに感動して頂けましたか。
ありがとうございます。
私は「ふん」ですが、妻は「へっ!」です。
その一言にグサッときます。

ヒコヒコ
2019年6月29日9:50

マサムネさま
お話を読んでいるだけで、とても楽しそうですね。自分もそういう日を作ってみようかなと思ってしまいます。
スタンプラリーで思い出しましたが、子供がまだ小さかった頃、学校などの催しでスタンプラリー大会に参加しましたが、最初はやる気の無かった私も、スタンプを押していくたびに、次第に燃え上がっていき、子供よりもこっちの方が夢中になってしまったことがあります。
スタンプラリーのノートではありませんが、妻は最近、神社仏閣の御朱印帳を押してもらうのが趣味のようです。見せてもらいましたが、なかなか良いものですね。私もやろうかな。

ヒコヒコ
2019年6月29日9:56

マダムMさま
「ふん」は禁句ですか。
でも、私の「ふん」はマダムMさんがイメージするような「ふん」ではなく、アリがささやくような力の抜けた「ふん」なのであります。おそらく妻の耳には届いていないことでしょう。
焼肉ガバガバ行けるとは凄いですね。私は息子たちのそれを見ているだけで圧倒されてしまい、自分が食べたような気持ちになってしまいます。
そういえば、回転寿しに連れていった時もそうでした。東京スカイツリーと見まごうような皿の山。この時も見ているだけで腹がいっぱいになったものです。

ヒコヒコ
2019年6月29日10:04

待花。さま
妻たちのストレス発散の日と言うわけでしょうが、手の痣を見たときに「こんなにストレスを抱えているのかい!」と逆に心配になりました。
そのストレスの原因は「俺」?
う〜ん、複雑な心境です。
待花。さんは焼肉屋では野菜ばかり焼いている?
ベジタリアンなんですね。
私は別な意味で野菜ばかり注文しているのですが、息子たちにはその真意が伝わらないようです。

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