そもそも、何故尾道へ行こうと思ったのか。それは古いビデオを整理していた時に見つかった一本の映画がきっかけだった。
その映画とは大林宣彦監督の「転校生」だ。1982年の公開というから、今から37年も前の映画である。
ストーリーは中学3年生の斉藤一夫と、彼の学校に転校してきた斉藤一美のふたりを主人公にしたファンタジーだ。
このふたりは幼い頃、家が近所だった幼馴染み。久しぶりに再会したふたりだったが、学校帰りに神社の石段から一緒に転げ落ちてしまう。するとふたりの心と身体が入れ替わってしまったのだった。しかしそのことに気がつかないまま、それぞれの自宅に帰ったふたりだが、そこで初めて自分があいつで、あいつが自分になっていることに気がつく。こんなとんでもない状況に戸惑うふたりだったが、とにかくお互いになりきって生活を続けることにしようということになった。だがしかし、そこは性格の異なるふたり。人が変わってしまったような一夫や一美の言動や行動に、周囲の人たちも不審には思うものの、まさか入れ替わっているとは思わない。ふたりの身の上に降りかかるは様々なトラブルを潜り抜けるうちに、いつしかお互いにしか分からない絆が芽生え始める。そしてそんなふたりにやがて別れの時がやって来て...というお話。
当時、主演の小林聡美の体当たりの演技や尾美としのりの女の子の演技が話題になった。
この映画を私はリアルタイムで観てはいないのだが、観て来たという周囲の連中から「尾美としのりってお前に似ている」とよく言われたものだ。
尾美としのりのことを知らなかった私は、似ていると言われてもただ困惑するだけだったが、あとから彼の映画を観て納得した。確かにどこか似ているところがある。外見というよりも雰囲気がそうだったのかもしれない。
後年、NHKの朝ドラ「あまちゃん」で、主人公アキの父親役をしていたが、私の妻は「あっ、あなたが出ている」と笑いながら言っていた。
何となくボオッとしたところと、イラッとさせるところが似ていたのだろう。
いけない。話が逸れてしまった。
映画の中の尾道を見ているうちに、その町の中に自分も入ってみたい、その町を歩いてみたい、そんな衝動が心の中を突き上げて来たのだった。
そう思うと決断は速い。仕事の間隙を縫うようにスケジュールを組んでみた。
ネットや本から情報を集め、行きたい場所や時間等をチェックしていく。この辺は普段出張が多いので慣れたものだ。
せっかく行くのだから、この旅のモチーフになった映画のロケ地も見てみよう。尾道ラーメンも食べてみたい。ポンポン岩に寝転んで、船が行き交う尾道水道を見下ろしたい。
行くことが決まると様々な欲求が溢れるように湧き上がって来る。
もちろん妻も連れて行かなければ禍根を残すことになる。そのことを妻に伝えると、思わぬサプライズ旅行に舞い上がった。
さて、晴れ男の私と晴れ女の妻。ふたりでモダンな尾道駅を一歩外に出ると、急に雨が降り出した。雨に降られてしまうなんてついていないなと思ったら、地元の人曰く
「雨の日は瓦屋根が綺麗だよ」とのこと。確かにしっとりとした甍の海は、とてもフォトジェニックだった。これはむしろツイているというべきか。
映画「転校生」のロケ地も見て回り、ああ、こういう場所で撮影したんだなと長い時を隔てて納得した。
普段からファンタジーは好きじゃないという妻も、この時ばかりは映画と同じ場所に居る自分に興奮気味だった。
尾道ラーメンもポンポン岩の上で寝転ぶことも出来て、ひとつの夢はここに叶った。
「転校生」でふたりが転がり落ちた石段の前で、冗談半分に妻へ「転がり落ちてみようか」と言うと、「嫌だ」とひとこと。でも、その顔はどこか嬉しそうだった。
遠く尾道まで来た甲斐があった。そう思った瞬間だった。
写真上:小林聡美が一気に自転車で駆け上がった陸橋への坂道
写真中:ふたりが入れ替わった御袖天満宮の石段
写真下:千光寺公園から尾道水道、尾道大橋を望む
その映画とは大林宣彦監督の「転校生」だ。1982年の公開というから、今から37年も前の映画である。
ストーリーは中学3年生の斉藤一夫と、彼の学校に転校してきた斉藤一美のふたりを主人公にしたファンタジーだ。
このふたりは幼い頃、家が近所だった幼馴染み。久しぶりに再会したふたりだったが、学校帰りに神社の石段から一緒に転げ落ちてしまう。するとふたりの心と身体が入れ替わってしまったのだった。しかしそのことに気がつかないまま、それぞれの自宅に帰ったふたりだが、そこで初めて自分があいつで、あいつが自分になっていることに気がつく。こんなとんでもない状況に戸惑うふたりだったが、とにかくお互いになりきって生活を続けることにしようということになった。だがしかし、そこは性格の異なるふたり。人が変わってしまったような一夫や一美の言動や行動に、周囲の人たちも不審には思うものの、まさか入れ替わっているとは思わない。ふたりの身の上に降りかかるは様々なトラブルを潜り抜けるうちに、いつしかお互いにしか分からない絆が芽生え始める。そしてそんなふたりにやがて別れの時がやって来て...というお話。
当時、主演の小林聡美の体当たりの演技や尾美としのりの女の子の演技が話題になった。
この映画を私はリアルタイムで観てはいないのだが、観て来たという周囲の連中から「尾美としのりってお前に似ている」とよく言われたものだ。
尾美としのりのことを知らなかった私は、似ていると言われてもただ困惑するだけだったが、あとから彼の映画を観て納得した。確かにどこか似ているところがある。外見というよりも雰囲気がそうだったのかもしれない。
後年、NHKの朝ドラ「あまちゃん」で、主人公アキの父親役をしていたが、私の妻は「あっ、あなたが出ている」と笑いながら言っていた。
何となくボオッとしたところと、イラッとさせるところが似ていたのだろう。
いけない。話が逸れてしまった。
映画の中の尾道を見ているうちに、その町の中に自分も入ってみたい、その町を歩いてみたい、そんな衝動が心の中を突き上げて来たのだった。
そう思うと決断は速い。仕事の間隙を縫うようにスケジュールを組んでみた。
ネットや本から情報を集め、行きたい場所や時間等をチェックしていく。この辺は普段出張が多いので慣れたものだ。
せっかく行くのだから、この旅のモチーフになった映画のロケ地も見てみよう。尾道ラーメンも食べてみたい。ポンポン岩に寝転んで、船が行き交う尾道水道を見下ろしたい。
行くことが決まると様々な欲求が溢れるように湧き上がって来る。
もちろん妻も連れて行かなければ禍根を残すことになる。そのことを妻に伝えると、思わぬサプライズ旅行に舞い上がった。
さて、晴れ男の私と晴れ女の妻。ふたりでモダンな尾道駅を一歩外に出ると、急に雨が降り出した。雨に降られてしまうなんてついていないなと思ったら、地元の人曰く
「雨の日は瓦屋根が綺麗だよ」とのこと。確かにしっとりとした甍の海は、とてもフォトジェニックだった。これはむしろツイているというべきか。
映画「転校生」のロケ地も見て回り、ああ、こういう場所で撮影したんだなと長い時を隔てて納得した。
普段からファンタジーは好きじゃないという妻も、この時ばかりは映画と同じ場所に居る自分に興奮気味だった。
尾道ラーメンもポンポン岩の上で寝転ぶことも出来て、ひとつの夢はここに叶った。
「転校生」でふたりが転がり落ちた石段の前で、冗談半分に妻へ「転がり落ちてみようか」と言うと、「嫌だ」とひとこと。でも、その顔はどこか嬉しそうだった。
遠く尾道まで来た甲斐があった。そう思った瞬間だった。
写真上:小林聡美が一気に自転車で駆け上がった陸橋への坂道
写真中:ふたりが入れ替わった御袖天満宮の石段
写真下:千光寺公園から尾道水道、尾道大橋を望む
コメント
ラーメン屋さんも多かったでしょ?
最近はネコカフェが大人気ですが。
楽しんでいただけたら嬉しいです♪(^o^)/
その舞台に身を置かれてご夫婦で素敵な時間をお過ごしでしたね。
ヒコヒコさんの様にロマンチックなご主人様で奥様が羨ましいです。
それに比べてうちの夫など情緒のかけらもないんですよ。
ロマンチックとは縁遠く、口が悪くて導火線が短い。もう付いて行くのに必死ですもの。きっとヒコヒコさんは奥様の歩幅に合わせて散策なさるんでしょうね〜!!
そうでなくともチビで歩くの遅い私は夫と歩く時は必死です。
魅力的な行程ですね!!久しぶりに千光寺公園の名前を聞きました。
昔、お客様から山陽山陰方面の周遊券の作成を依頼され(しかも出来るだけ安くお願いしますなどと言われます)周遊指定地に千光寺公園を使わせて頂いていました。
瓦屋根が重なり、細い坂道から瀬戸内海が見える…そんな景色が浮かびます。
あ、これも映画のシーンでよく見ますよね。
ほほう!!尾美としのりさんですが…
渋い声の尾美としのり。ヒコヒコさんーおっとこ前ですね〜〜!!
はい、初広島を十分堪能させて頂きました。
広島市内にも宿泊しましたし、最終日にはマツダスタジアムでカープvsタイガースの試合も時間の許す限り観戦しましたよ!
念願だった広島市電にも乗車出来ました。今度は大ヒット映画の舞台になった呉市へ行ってみたいと思います。
いやいや、ロマンチックだなんてことありませんよ。たぶん妻も私と結婚して、千年の恋からすぐに目覚めてしまったことでしょう。
歩幅を合せてくれるのも妻の方です。コンパスが短い私は歩くのも必死です!
そういえば、まるこさんは旅行業に従事されていらしたんですよね。きっとお客さんから無茶なオーダーなど沢山あったことでしょうね。
千光寺公園へ登るロープウエイからの景色も素晴らしかったですよ。尾道、いや、瀬戸内は私の想像していた以上に素晴らしい場所でした。
尾美としのり。いや、最近では家族は私を「ゴミ トシヨリ」と呼んでいます。
漢字で書くと「塵 年寄」ですか。そうだ、今日は燃えるゴミの日だった。出しに行かなければ!!
あまちゃんも見たかったなぁ!
ヒコヒコさんに似てらっしゃる…そうですか。
奥様に言われるとはかなりですな。( ..)φメモメモ
個人的にはマンハッタンラブストーリーでかなりのおやじっぽさを
見せていた尾美さんのキャラクターが記憶に鮮烈です。
ヒコ様、ちゃんと記憶に留めさせていただきました。
最近は日曜日の集団・・・・の出られてますからね、またよく観察させていただきます(笑)。
呉、私が帰郷するために通った場所です。
大和ミュージアムもありますし、また機会があったら是非。
そしてしまなみ海道を渡って道後温泉にも足をお運びくださいまし。
そうそう、奥様は確かカープファンでしたよね。
その日は勝ったのでしょうか?奥様孝行もできてまた一株あがったのでは?
どうも尾美としのりの方に話題の中心が移りつつありますが、似ている似ていないは個人の感想です。私自身はそんなに似ていないと思うのですが、周りがそう言うのでそうなのかなと。
お手許のメモには?マークを付記しておいてくださいませ。
あくまで私の周囲の人たちの個人的感想に過ぎません。変な期待はしませんように。
さて、呉というと「この世界の片隅に」ですね。久しぶりにアニメで感動した作品です。のんさんが呉を旅した写真集まで買ってしまったくらいですから。
次回は呉と、そして庵さんの四国、道後温泉行きですね。楽しみです。
そうそう、その日はカープが勝ちましたよ。帰りの新幹線の中で結果を知り、妻も喜んでいました。
亡き義兄が大のカープファンでして、買ってきたクルマを真っ赤に塗装し直してしまったくらいです。きっと兄も一緒に観戦したねと妻は言っていました。
妻孝行、バッチリです!
>妻孝行、バッチリです!
何よりでございます(*^^*)
「この世界の片隅に」、私はアニメではなくテレビの放送でみました。
道後温泉も今は長い改修に入っていますが、あの手この手で観光客を呼び寄せています。
機会がありましたら是非おいでくださいまし。ちょっと足を延ばして内子という場所も趣がありますよ。
是非伺いたいと思います。
内子は街並みが美しいところですね。懐かしさが漂う場所と聞いております。
きっと絵になるところなのでしょうね。
愉しみがまたひとつ増えました。情報ありがとうございます。