ほぼ毎日のように本屋へ通っている。世間では本離れ、活字離れが叫ばれて久しいが、私には一切関係なし。面白そうな本があったり、知らないジャンルの本を見つけたりするとすぐに飛びついてしまう。
信じられないかもしれないが、稀に本が私を呼ぶこともある。特に大きな書店でそれは起こる。
いつもは書評や広告などを見て本屋に入ることが多いのだが、購入する本を決めずにぶらっと入ると、磁石に吸い寄せられるように店内を歩き出す。やがてある本棚の前で立ち止まると目の前に背表紙が光って(イメージとして)見える本がある。著作者もタイトルも知らない本だ。手に取ってパラパラと捲ってみると、なんとなく面白そう。そこでそのままレジへと向かうのである。
このようにして見つけた本は、そのほとんどが読んで良かったと思う本ばかりだった。長年本屋と付き合っていると、こんな能力が生じてくるのだろうと自分なりに思っている。
さて、それだけ本屋に通い詰めていると、店員さんに顔を覚えられてしまうようで、時々すれ違いざまに挨拶されたり、「今日はお探しの本は見つかりましたか」などと声を掛けられる。それはそれで嬉しいのだが、逆に彼女らは私の読書傾向、購買傾向を知っているということになりはしないか。
本屋の店員さんたちは、普段から様々な本に触れ、時にはPOPも書いたりするという本のプロだ。本や作家などに対する見識も相当高いだろう。そうなると、下手な本を持ってレジへ行くのは考え物だ。特に私のように顔を覚えられている者にとっては尚更である。
(あれ、こんな本を読むんですか?)
(あらまあ、アンタも好きねぇ!)
レジの際に、微笑みを浮かべながら精算している彼女たちの表情の奥には、きっと軽蔑の色を湛えたもうひとつの顔が隠されているに違いない、そんな妄想を思い抱いてしまうのだ。
だから時には難しい本を持ってレジへ行くと、
(またあぁ、ご冗談を!本当に読めるんですかぁ?)
(お客様、これは何かの間違いでは?いつもの児童書ではございませんよ)
(睡眠薬がわりにお使いですか。それならこの本は最適です)

「次のお客様、どうぞ」
その声に目を覚ます。
慌ててレジで小銭をぶちまける。
周りのお客の冷たい視線を感じながら、今日も本屋通いは止まらない。




コメント

しゆい
しゆい
2019年3月4日12:58

本のほうが光ってみえる。それは科学的にも解明できないのでしょう。
ヒコヒコさんの能力ですね。羨ましい。
本屋に行かなくなって久しいです。わたしは老眼で外出時にメガネが必要で
読書などは裸眼が適しているのでかけ外しが面倒、ということもあります。
本屋さん通いが楽しいヒコヒコさん。また良い本をお知らせくださいね!

まるこ
2019年3月4日15:57

おお〜!!「本の妖精」に取り憑かれたダンディーヒコヒコさん。
やはり好きが高じると本の方から「私を選んで〜〜!!」と発信するようになるんですね。ふむ。今でも図書館や本屋では何故かトイレに行きたくなる私の様な読書嫌いには想像もつきませんが…。しかしなぜ私は図書館や本屋さんでトイレに行きたくなるのでしょうか??ますます長居出来なくなりますよ。トホホ。
確かに!!レジのお姉さんにどう思われているか??これは気になりますよね。
ちょっとエッチなタイトルだったりすると「お〜、旦那さん、枯れないですな!!」なんて思われたら恥ずかしいですもんね。(すみません。そもそもヒコヒコさんがそんな本を選ぶ事ないですもんね?ねっ??笑)。高校時代渡辺淳一の「阿寒に果つ」という本を買ったことがあります。が、後にこの方が「失楽園」を書くことになるとは。順番逆だったらちょっと躊躇いますもん。
そうそう、新聞広告に名作を聞くCDが出ていました。市原悦子さんはじめ俳優さんが朗読してくださるんですよね。「これは!」と思いましたが、値段も高いし、そもそも名作を名調子で朗読されたら、この上ない睡眠導入剤になること間違いないですもんね。心改めてちょっとづつ本読みます。皆さんの日記拝読する事は私には読書であり、脳みそ活性化してくれます。笑。

マダムM
2019年3月4日18:35

私も本屋さんが好きです。我が町から本屋さんが無くなり、池袋に行かなくてはなりません。三省堂、旭屋書店、ジュンク堂書店等の巨大書店ばかりで(小規模店舗は廃業)、たまに専門的な本を探す場合、遠くの棚まで行かなければなりません(-_-;) 最近は検索機能を使えるようになったので、在庫確認も出来るようになりましたが・・・
私は生憎本からプロポーズをされたことは無く、自分で選んでいます(-_-)
好きなシリーズ、作家、新聞評等から選び、あとはブラブラと書棚を見て選んでいます。立ち読みも楽しいし(^^♪
本屋さんはワンダーランドですね、言い過ぎかな(笑)

ヒコヒコ
2019年3月4日20:27

半田思惟さま
私も老眼であり乱視であり、今では裸眼だと本もまともに読めません。
100金の安い老眼鏡が最近ではお気に入りで、度が違うものをいくつか揃えて、使い分けています。本当はちゃんとしたものを掛けなければいけないのでしょうがね。
また何か面白い本を見つけたらご紹介したいと思います。妻は自分では本を読まず、私から内容を聞くだけで読んだつもりになっています。つまりズルですね。

ヒコヒコ
2019年3月4日21:49

まるこさま
本の妖精なのか妖怪なのかは分かりませんが、何者かに取り憑かれているのは間違いなさそうです(笑)お祓いでもしたら、本の浪費癖もすこしは良くなるかもしれません。
さて、まるこさんが本屋や図書館でトイレに行きたくなるのは、本に対する拒絶反応でしょうか。そういうことってありますよね!身体は正直ということですよ。
ところで本屋さんの店員さんは圧倒的に女性が多いですよね。レジへ持って行く本はオネエチャンがもろ肌脱いでニッコリ笑っている、そんな本はさすがに気が引けますのでネット購入です( T_T)\(^-^ )バキッ!
そうそう、失楽園も読みましたぞ!ああいう小説を書ける渡辺淳一にはまだまだ負けんぞと思うのでしたが、身体は乾杯、いや、完敗でした。
名優たちが文芸作品を語って聞かせるCDもありますね。今度、自分で吹き込んで見ようかしらん!安上がりで作品理解にも繋がるし、一石二鳥かもしれません。でも、眠れなくなるかな?名優でじゃなく、迷優のほうで!

ヒコヒコ
2019年3月4日22:17

マダムMさま
気がつけば此処仙台も大型書店が幅をきかせています。立ち読みしてハタキを掛けられた遠き日は今何処?本屋で本を読みながらコーヒーが飲めるんですから時代が変わりました。
それでも東京は良いですよね。本屋も図書館も充実しています。でも同じ東京の中でも地域格差は生じているようで、それは私のところでも同じです。
家の近所にあった小さな本屋も遂に店仕舞いしてしまいました。なんとも淋しい限りです。
さて、私、本からお声をかけて貰えるのは嬉しいのですが、お付き合いするには軍資金が足りずに困っております。妻はそんな本とは別れなさいと言いますが…

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