心にゆとりが出来たのか、このところ毎週1回は会社帰りに映画館へ立ち寄っている。昨年まではこんなことは一切無かった。今年に入り、息子に仕事を任せたことも、心にゆとりが出来たせいかもしれない。
先週は「マスカレード・ホテル」を、その前の週は「七つの会議」を、そして昨夜は「フォルトゥナの瞳」を観てきた。平日の夜にも関わらず、7割程度の入りであったが、その大半は若いカップルか女性のグループで、私のようなオッサンがひとりで観ている姿は他に見当たらなかった。
この映画も前回、前々回同様、原作本を既に読んでいたので結末は分かっている。だから、どのようなアレンジが施され映像化されるのか、そこに興味があった。
原作は百田尚樹氏の「フォルトゥナの瞳」だ。人の運命(死)が見えるという特殊能力を備えたひとりの青年の物語。
他人の死を救うたびに、自分は死へ一歩近づいていく。そして愛する彼女に死が迫っていることを知った青年が取った行動は...
映画の終盤、あちこちから鼻水を啜る音が聞こえてくる。そして私も鼻水が。
この歳になっても、恋愛映画に感動する心を持ち合わせている自分に驚く、と書きたいところだが、おそらく花粉症かもしれない。
それにしても百田尚樹という作家は、実に守備範囲の広い人だ。あの容貌からは考えられないこういう恋愛物も書けば、時代劇やスポーツ、評伝物、そして「永遠の0」といった戦争をテーマにした作品等々、実に多岐に渡っている。
幻冬舎の見城徹社長が「稀代のエンターティナー」と評するのもよく分かる。

まだ私が大学生の頃、仙台駅前に複数の映画館が入ったビルがあった。
親父がそこのオーナーと知り合いだったので、毎月各映画館の招待券を貰っていた。その中の1館はいわゆるにっかつ系の成人映画だったのだが、『使わないで捨てるつもりか。そんな罰当たりなことをしたら神様に叱られるではないか』と入館をためらう自分を厳しく叱責し、何度も利用させて貰った。
やがて私が映画館の招待券を毎月たくさん貰っているということが、友人たちの間で一気に広まってしまい、昼飯代にも困るような生活をしていた私は、1枚200円、ただしにっかつは400円で譲っていた。勿論、あっという間に完売である。貧乏学生だった我々には、映画館代は当時でも高かったのだ。
それだけではない。毎週のように女の子を誘っては映画館デートをしたのもその頃だ。
なにしろ招待券があるからお金の心配はない。必要なのは映画が終わったあとに飲むコーヒー代くらいなもの。
女の子たちの間では「安全な男」という有難くないレッテルを貼られていたので、声をかけると「いいよ」と二つ返事で映画に行ってくれる。
それにしても、学生時代に何本の映画を観ていたのだろう。随分観たような気がするし、その割には覚えていないのはどうしたことか。映画を観ながら他のことを考えていたのだろうか。まあ、どうせろくでもないことを考えていたのだろうが、今となってはそれすら覚えていない。

綺麗で快適になった映画館。
暗闇の中でふと思い出すのは、そんな若い頃の映画の思い出だった。
ポップコーンセットを抱え、ひとりポリポリ齧りながら、さて来週は何を観ようか...

コメント

まるこ
2019年2月28日10:40

良いですね〜〜〜!!
そしてヒコヒコさんは実に充実なさってますね。
私達昨日結婚して31年初めて夫と映画に行ったんです。それがこの有様でして。
呪われていますよ…。夫も嘆いています。変わった事はしないに限ると、今朝も項垂れています。

ヒコヒコ
2019年2月28日11:20

「翔んで埼〇」という作品ですね。なんでも埼〇では大ヒットしているとか。
ご主人との初めての映画がこの作品というのは、ちょいとミスりましたか!
他県人のひとりとしてはこの映画、興味をそそられるものがありますが、まるこさんがそこまで落ち込まれるような映画ならば、やはり観ないでおきましょう。
来週は再び「恋愛映画」をひとりで観に行くことにします。

achara
achara
2019年2月28日15:20

ヒコヒコさま
映画三昧、いいですね。TOHOシネマズ日本橋が休館のため「アリータ」を観に行けず、FMOVIESで映画鑑賞しています。

ヒコヒコ
2019年2月28日17:05

acharaさま
通常料金は1800円と決して安くない金額ですが、お陰様でこちらはシニア料金1100円で鑑賞出来ます。これは助かりますね。浮いた分はポップコーン・セットになりますが。
駅の近くに映画館があるのも便利です。終わったらすぐに電車に乗れるので、とても楽です。

nophoto
一読者
2019年2月28日18:11

今日は。
私はDVD含め、月、5、6本観ます。殆どは、外国系ばかりです。
シニアは1100円、本当に助かります。この時期、アメリカでは、アカデミー賞の
受賞でもちきりですが、、世界の黒澤の影響を受けた監督も、アメリカやヨーロッパにも沢山いますが、最近の日本の映画は、アニメからの映画化とか、若手の演技力も
イマイチのタレントあがりの俳優ばかりで、観るものが、シニア世代には馴染めず
つい、外国系ばかりです。今、最も旬なのが、メキシコの監督達。Romaという作品が、外国映画賞を取りました。もちろん、日本人ですから、日本の映画も、取ってもらいたいですが、映画の歴史からみると、アメリカには敵わないかなと私としては
思います。

ヒコヒコ
2019年3月1日8:41

一読者様
いつもコメントをありがとうございます。
どちらかというと洋画を観ることが多く、邦画はむしろ少ないくらいでした。
理由はと問われれば、一読者さんと同じと申し上げましょう。
アカデミー賞については私も関心を持っていますが、改めて黒沢明監督の影響力の大きさには驚かされます。この先、日本に黒沢監督のような世界の映画人に大きな影響力を及ぼす人物が現れるだろうかと、そんなことを考えてしまいます。
黒沢明の話が出たついでにというと何ですが、今私が読んでいる本に「偽善への挑戦 映画監督川島雄三」があります。
小津安二郎や木下恵介等の助監督を経て監督になった人ですが、私個人としてはこの人もまた天才監督のひとりだと思っています。
特に私が好きな作品が「幕末太陽傳」ですが、四十代半ばで夭逝してしまったのが何とも残念です。
川島雄三は昨年で生誕100年だったようですが、今の日本の映画界にこのような人物がいたら、ひょっとして第二のクロサワになれるのではないかなどと夢想してしまいます。
私もスペイン語を少し齧った関係で、スペインやラテンアメリカ諸国の音楽や文学などには関心があるのですが、受賞したアルフォンソ・キュアロン監督の作品は「ゼロ・グラビティ」一本しか観ていませんので、是非他の作品も観てみたいと思います。もちろん「ROMA」もですが。

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