私が使っている印鑑は、二十歳の時に親父が作ってくれたものだ。認印と実印のふたつだが、認印は柘植材で実印は象牙である。ワシントン条約締結国である日本は、現在国内にある象牙を使い切ってしまったら国外から輸入することは出来なくなるので、いずれこの象牙の実印は貴重なものになるだろう。
ところで、この印鑑を作ったハンコ屋さん。実は親父の知り合いだった。どのようなことで知り合ったのかは分からないが、その関係でおふくろもこのハンコ屋さんに印鑑を作ってもらったようだ。
今はもう廃業されてしまったようだが、「大越」という名前であったと記憶している。
一見、普通のハンコ屋さんのようだが、ここでハンコを作ると、或る特典があった。それはこの大越さん、特殊能力の持ち主、未来が見えると言う予言者でもあったのだ。
あの頃、親父が「よく当たるんだ」と言っていたのは、この大越さんのことだった。
占いの類をほとんど信じない親父がそう言うくらいだから、余程当たるのだろう、当時私はそう思ったものだ。
さて、親父が印鑑を作ってくれた特典として、私も未来を占ってもらえることになった。
大越さんに会うと、本当に普通のおじさんである。背広を着ているので会社員のようだった。とても占い師のようには見えない。
なにせ遠い昔の話だから、この時どのようなことを言われたのかすべてを思い出すことは出来ないが、それでも記憶に残っていることが幾つかある。
まず、健康面で気管支系が弱いから気をつけること。結婚は26歳の時。子供は3人出来る。この3つだけは覚えていたが、結果はまったくその通りとなった。
社会人になってから、私は慢性気管支炎で悩まされることになったし、確かに26歳で結婚もした。そして今、3人の子供の父親になっている。

と、こう書くと、なんだ、それならよくある占いの話ではないかと言われてしまいそうだが、本当の凄さはここからなのである。
この時、私はまだ妻とは知り合っていなかった。その妻が仕事による体調不良で会社を辞め、アルバイト生活をしている時に、偶然この大越さんというハンコ屋さんを知ることになった。
アルバイト仲間がこのハンコ屋さんを知っていたのである。仕事がきつくて体調を壊してばかりいた妻は、開運と健康快復を願って印鑑を作ることにしたのだが、その際に大越さんから未来を占ってもらったのである。
するとこう言われたそうだ。
まもなく結婚する相手と出会うことだろう。将来、子供は3人出来る。それは全員が男の子である。結婚相手は年下である云々。
そして最後に一言こう告げられたという。その人の名前には「ひ」という文字が付く筈だと。

信じる信じないは、あなた次第です。

コメント

まるこ
2019年2月21日19:00

よく「開運ハンコ」と言いますね。
ハンコで運勢などが良くも悪くもなると祖母に聞かされた事があります。
ハンコ屋さんが精神を研ぎ澄まし掘る印影。芸術ですね。
なのでハンコ屋さんが占えるというお話、私はあながちない話ではないと思います。
私が結婚する時、亡き祖父の象牙の実印。祖母が夫の実印に彫り直して貰ってくれました。今では貴重な象牙ですよね。実印を押す時=大事な時を祖父が守ってくれるような気がします。今は機械でチャチャと彫れる時代です。なんだか世知辛いですが外人さんはこのハンコに興味があるようです。ハンコの文化というのも珍しいですもんね。アンディーとかマイクとかを漢字にしてハンコを作るお店が繁盛しているとテレビで見ました。時代ですね〜!!

nophoto
2019年2月21日21:49

すごいです そのハンコ屋さん!!
「ひ」のつくお相手、まさにヒコヒコ様
お子様の人数もぴったり。信じます、信じますとも!!!
お幸せな今を思えば特に。。。
私のハンコは、OL時代に作ったもの。
一応結婚したら性が変わるので名前だけ。
特に逸話もありませんが大切に使っています。

マサムネ
2019年2月21日23:05

柘植の字が昔読めませんでした。 手相見に見てもらったことが数年前にありますが、それから手相も変わっていると思うのでなんとも。 ただ、あと数年すると今までの人生とぐるっと変わって忙しい日々を送ります、アナタは「言語に関する何かで大成します」と言われました。 今の所アナウンス、声優、文筆業、校正、作家、噺家、お笑い芸人などの仕事は一つも来てません。 エキストラでドラマと映画に二回ほどでました。 某地元の祭りの初代主人公に当選しました。けど何もありません。僕もハンコ屋さんに人生占って欲しい!

アミ
2019年2月22日5:59

商売をしていた母は、毎月8の日に、家じゅうの印鑑(会社・個人も含めて)を磨いて、神棚に上げてました。
子供たち、総出で磨かされましたこと、覚えてます。
柘植の木は、磨くと、艶が出てきて、綺麗でした。
母は、大磯(神奈川県)のほうまで、印鑑を作りに行ってたようです。
その印鑑、私も大事に持ってます。
結婚して、舅の印鑑(水牛)を遺品に貰い、今でも銀行印として使ってます。
サインの時代になりましたが、私は、印鑑、好きです~♬

ヒコヒコ
2019年2月22日23:49

まるこさま
この話を書くと、必ずachara氏が乗って来ると思いながら書きました。すると思いの通り、彼もブログに印鑑の話を書きましたね。私の印鑑の知識は彼からの受け売りが大半です。銀行印は何故文字を横に彫るのか。それは倒れない(倒産しない)ためだとか、新しい印鑑には文字に封印がされていて、初めて使う時は御神酒を布や紙に浸し、文字を拭ってから使うなど、彼から色々と教えてもらいました。
印鑑はその持ち主以上に本人になる、彼がそう言っていたのがとても印象的でした。何故って、印鑑を押すことで初めて本人であると認められることが、この社会のシステムには多々ありますからね。特に公的文書には印鑑を押さなければいくら本人が書いたと言っても認めてはくれません。それだけ印鑑の持つ力は、当の本人よりも力を持っているわけです。
印鑑は本当に不思議な道具ですね。特に実印にはご先祖様のパワーが籠められているような気がします。大事に扱わなければいけませんね。

ヒコヒコ
2019年2月22日23:54

庵さま
信じる信じないは、あなた次第などと書きましたが、すべて事実、本当の話です。このハンコ屋さん、一体何者なんでしょう。一本のハンコからすべてが見通せるなんて、不思議な話ではあります。
もっとしっかり未来の話を聞いておけば良かったと、今になって後悔しています。

ヒコヒコ
2019年2月23日0:21

マサムネさま
柘植ってなかなか読めませんよね。私の場合は、或る作家の名前から「つげ」と読むことを知りました。これも読書の効能でしょうか。
故人ですが、私の伯父も手相、観相、姓名判断が得意で、よく見てもらったものです。ただし、このハンコ屋さんみたいにはいきませんでしたけど。
マサムネさんは言語に関することで大成するというお話ですが、一体何でしょうね。楽しみですね。私も〇〇で大成しますよなどと言われてみたいものです。
いや、もう年齢的に無理ですね(涙)

ヒコヒコ
2019年2月23日0:29

アミさま
それは良いお話を聞かせて頂きました。ありがとうございます。
毎月8の日に神棚に上げるのですね。
きっと神様からのパワーを注入するのと、ご先祖様を大事にするという儀式なのかもしれません。そういう風に理解しました。
私の柘植の認印も飴色に輝いていますよ。40年かけてとても良い色になりました。

chiaki
2019年2月24日6:23

2人の将来をバッチリ当てるなんて、
その方は本当に「見える」方なのでしょうね。
私も見てもらいたい!と思いましたが、もう廃業されてるのですね。
残念です。
ヒコヒコさんが時々遭遇する怖い体験は、ちょっとご遠慮したいのですが、
こんな不思議な経験なら、ぜひ私も体験してみたいものです。

ヒコヒコ
2019年2月25日8:24

chiakiさま
たまたまネットでこのハンコ屋さんを探してみたら、やはり探しておられる方がいるようです。『仙台 印鑑 大越』というキーワードで検索してみたら載っていました。書き込みをされたのはだいぶ古いのですが。
その方は大越さんで印鑑を作りたいと書かれていますが、真の目的は未来を占ってもらいたいということなのではと思います。何故って、他にも印鑑を作ってくれるところは沢山あるのですからね。あえて大越さんをというのはそれしか考えられないのです。
親父に聞いてみましたが、だいぶ前から音信不通とか。そちらのほうが気になります。

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