家の前に宅送のトラックが停まった。どうやら我が家に荷物が届いたようだ。
ドライバーが降りてきて、荷室の扉を開けると中へ入って行った。しかし、なかなか出てこない。どうしたんだろうと居間の窓から見ていたら、ようやく姿を現した。
なにやら大きなダンボール箱を、荷室の奥から引き摺り出して来た様子。しかし、相当重いようで、降ろすのに苦戦している。
見ていられなくなった私は、サンダルを突っかけて外へと飛び出した。
ふたり掛りで玄関へ運び込んだそれは、小型のタンスを横に倒したくらいの大きさがある。それもかなりの重さだ。大人の男ひとりで運ぶのは難しい。一体誰がこんなものを頼んだのだろう。
伝票に受け取りのサインを書きながら、受取人の名前が私になっていることに驚いた。では差出人はと名前を見ると、長男の名前が書かれてあった。
『商品名:陳列棚』
ガラス製品につき、取り扱い注意と書かれてある。この重さはガラスのせいだった。
しかしなんでまた、息子が私にこんなものを送って寄越したのだろうか。
玄関に置かれたままの大きなダンボール箱は、今夜息子が帰ってくるまでこのままにしておこうと思った。
夜半、長男が疲れた顔で帰宅した。そして玄関を占領する大きな荷物を見て
「あー、届いたんだ。やっぱり大きいな」と感嘆の声をあげた。
私は息子に向かって「なんだコレは」と問うと、
「鉄道模型の陳列棚だよ。前に欲しいって聞いてたから買った」とのこと。
そう、確かに欲しいと言ったことがある。
昔からNゲージの鉄道模型を買い込んで、ロフトで走らせては喜んでいたのだが、いつもこれらの車両を眺めていられたら良いだろうなと思ってはいた。だが、まさか...
息子に言わせると、私の定年祝いという名目のようだが、それはあくまでも表向きであって、実際には自分の所有する鉄道模型を飾っておきたいためだった。
長男もまた、父以上の筋金入りの鉄チャンなのである。
このあと深夜までかかり、ふたりでどうにか組み立てたのだが、横に長いこの陳列棚を設置する場所がない。結局、居間のレイアウトを変えることによってスペースを作り出し、どうにか設置することが出来た。
この陳列棚、ガラスの棚が8段ほどあり、奥行が結構あるので、ひとつの棚に4編成ほどの鉄道模型を飾ることが出来る。しかも背景が鏡になっているので、さらに広く見えるところが憎い。
息子は買い込んでいた鉄道模型を持って来ると、レールを敷いて並べ始めた。
手慣れた手つきでJRになってからの花形車両を次々に並べていく。しかし一番上の棚には飾らない。どうやらそこは父の棚ということらしかった。
それではありがたくと、私もレールを敷いて国鉄時代の古くて懐かしい車両を並べさせてもらった。こうして新旧の車両が一堂に会した陳列棚が出来上がった頃には、東の空が白み始めていた。
「好きなことをしていると、時の流れを忘れると言うけれど...」
思わず私の口を突いて出た言葉だった。
ドライバーが降りてきて、荷室の扉を開けると中へ入って行った。しかし、なかなか出てこない。どうしたんだろうと居間の窓から見ていたら、ようやく姿を現した。
なにやら大きなダンボール箱を、荷室の奥から引き摺り出して来た様子。しかし、相当重いようで、降ろすのに苦戦している。
見ていられなくなった私は、サンダルを突っかけて外へと飛び出した。
ふたり掛りで玄関へ運び込んだそれは、小型のタンスを横に倒したくらいの大きさがある。それもかなりの重さだ。大人の男ひとりで運ぶのは難しい。一体誰がこんなものを頼んだのだろう。
伝票に受け取りのサインを書きながら、受取人の名前が私になっていることに驚いた。では差出人はと名前を見ると、長男の名前が書かれてあった。
『商品名:陳列棚』
ガラス製品につき、取り扱い注意と書かれてある。この重さはガラスのせいだった。
しかしなんでまた、息子が私にこんなものを送って寄越したのだろうか。
玄関に置かれたままの大きなダンボール箱は、今夜息子が帰ってくるまでこのままにしておこうと思った。
夜半、長男が疲れた顔で帰宅した。そして玄関を占領する大きな荷物を見て
「あー、届いたんだ。やっぱり大きいな」と感嘆の声をあげた。
私は息子に向かって「なんだコレは」と問うと、
「鉄道模型の陳列棚だよ。前に欲しいって聞いてたから買った」とのこと。
そう、確かに欲しいと言ったことがある。
昔からNゲージの鉄道模型を買い込んで、ロフトで走らせては喜んでいたのだが、いつもこれらの車両を眺めていられたら良いだろうなと思ってはいた。だが、まさか...
息子に言わせると、私の定年祝いという名目のようだが、それはあくまでも表向きであって、実際には自分の所有する鉄道模型を飾っておきたいためだった。
長男もまた、父以上の筋金入りの鉄チャンなのである。
このあと深夜までかかり、ふたりでどうにか組み立てたのだが、横に長いこの陳列棚を設置する場所がない。結局、居間のレイアウトを変えることによってスペースを作り出し、どうにか設置することが出来た。
この陳列棚、ガラスの棚が8段ほどあり、奥行が結構あるので、ひとつの棚に4編成ほどの鉄道模型を飾ることが出来る。しかも背景が鏡になっているので、さらに広く見えるところが憎い。
息子は買い込んでいた鉄道模型を持って来ると、レールを敷いて並べ始めた。
手慣れた手つきでJRになってからの花形車両を次々に並べていく。しかし一番上の棚には飾らない。どうやらそこは父の棚ということらしかった。
それではありがたくと、私もレールを敷いて国鉄時代の古くて懐かしい車両を並べさせてもらった。こうして新旧の車両が一堂に会した陳列棚が出来上がった頃には、東の空が白み始めていた。
「好きなことをしていると、時の流れを忘れると言うけれど...」
思わず私の口を突いて出た言葉だった。
コメント
素敵な息子さんですね(^O^) きっと棚を買う理由としてお父様を利用したのでしょうね、いいなぁ!
鉄道模型と言えば「原鉄道博物館」、あれはかの日産ビルの隣でしたっけ?
鉄道模型を見ていると、段々中に運転手さんがいて、お客さんが見えて来ます、こう見えて想像力というか妄想力はかなりあるので(笑)一日見ていて全然飽きませんもの。また行きたくなりましたよ(^^♪ 本物の電車もボーっといつまでも見ていられます。東京駅周辺のビルの高層階からの眺めは、本当に飽きないです、誰も付き合ってくれないけど(-_-;)
親子で共通の趣味があるって素敵ですよ。ずらっと並んだNゲージの模型。裏が鏡だなんてそんな尚更迫力出ますね〜〜!!飾り棚がリビングにあると眺めたい時の眺められ悦に浸れますね。我が家のリビングは思いっきり「バリ島チックなエスニック調」にしちゃいました。笑。Nゲージの様な繊細で緻密で品の良いレイアウトとは程遠いですが、大好きなインターコンチバリをお手本にしてみました。ふむ。正直クオリティー高くないです^^;それでも私なりに拘り床もドアも家具も全てダークブラウンで統一しています。愛犬まるの遺骨を入れる骨壷収納ボックスまで。笑。
落ち着くんですよね。機会があったら是非UPして下さいね。
先日国鉄時代の硬券がどっさり出てきました。はて??夫が昔集めていたのでしょうか??入鋏ハサミの形が様々だったり、趣のある切符に懐かしさ覚えました。
私は車掌さんが乗り越し精算する時にパンチする長い入鋏ハサミが好きで、わざわざ精算して頂いてましたが、迷惑な子供ですね。笑。駅の窓口で「山手線内まで子供一枚」と切符を買い日付をシャッと入れてもらい、一段高くなっていたラッチの中の駅員さんに背伸びして入鋏してもらった時、「冒険が始まる」と胸が踊りました。
小学一年生の夏です。実家駅から急行「ゆけむり」で上野へ。乗り換えて浜松町へ。再びモノレールの乗り換え大井競馬場前まで。祖父母の驚いた顔が忘れられません。
ちょっとした家具と言ってもよい代物ですから、普通なら妻に文句のひとつも言われるところです。そこで私へのプレゼントという名目で購入した訳です。
まあ、私の息子ならやりそうなことです。
何年か前に「原鉄道模型博物館」に妻と二人で出かけましたが、鉄道模型ファンなら一度は訪れるべきところですね。
なにしろNゲージがオモチャに見える、1番ゲージ鉄道模型ジオラマには圧倒されてしまいます。レールから車輪から本物と同じ材質のものを使っているので、走行音までが本物そっくり。一日中見ていても飽きません。
コクヨの元専務、原信太郎氏のコレクションですが、夢を実現させた我が憧れの人です。
実は一番喜んでいるのは孫なんですよ。リビングに置いたので、我が家に遊びに来ると、この陳列棚の前から動こうとしません。
孫にはプラレールを買ってやったのですが、まだ赤ん坊なのに本物志向なんですね。鉄チャンの血が確実に受け継がれたようで、この先どうなるのか心配です。きっとじいじとおじさんの鉄道模型は、孫に取られてしまうことになりそうです。
ところで国鉄時代の硬券がどっさり出てきたとか。私も沢山持っているのですよ。それも廃止されてしまった駅の入場券など沢山あります。でも、そんなに価値はないかもしれません。さらに、手書きの指定席券など今では考えられないような切符も大量に持っています。
結局、こういうものを眺めて郷愁に浸るくらいしかないのでしょう。
ところで急行「ゆけむり」。忘れかけていた懐かしい名前です。思い出させて頂き、ありがとうございました。