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キートンの線路工夫 The Railrodder
2018年2月13日 映画 コメント (2)おそらく高校生の頃だったと思う。たまたまテレビをつけたら不思議な映像が流れていた。
それはトロッコに乗ったひとりの老人が、どこまでもどこまでも旅を続けるというもの。どこへ向かっているのか、美しい風景の中をひたすらトロッコは走り続ける。平原を抜け山を越え谷を越え、そして川を渡り、大都会の駅を通り抜け、トンネルを抜けて辿り着いた場所は...
途中から観だしたこの映画にいつしか釘づけとなってしまい、気がつけば何故か涙がこぼれていた。
この時はまだこの主人公の老人が、三大喜劇スターのひとり、バスター・キートンであることすら分からなかったのだが、その無表情な顔つきと、様々に移ろいゆく風景が対照的で自分にとっての忘れられない映画のひとつになった。
初見から数十年が経ち、ようやくそれが「The Railrodder」(邦題:キートンの線路工夫)という短編映画だと知り、今改めてそれを観ると高校生の頃とはまた違った感慨を抱いた。実質的にこの作品がキートンの遺作となったようだが、自分もその歳に限りなく近づいてしまった訳で、若い頃に受けた印象と違うのは当然である。そしてキートンがこの映画を作った理由も今になって何となく分かる気がした。表面はコメディを装ってはいるが、人生の深奥を捉えたドラマなのではないかと勝手に解釈している(結局人は変わらない。変わるのは周りの方なのだ。狭いトロッコの上で何度もバタバタするのは、周りの環境が変化するため。でも、結局は変わらないのだ)。
なんでもこの時、キートンは体調がすぐれなかったようだが(公開の翌年に亡くなっている)、若いスタッフたちと精力的に議論し、何度もリハーサルを行っている姿が並行して撮影されたドキュメンタリー映画「Buster Keaton Rides Again」として製作されている。その中には69歳の誕生日を皆で祝うシーンや、ロケ地となったカナダ各地でのファンとの交流も収められている。
映画では常に「無表情」なキートンを周りの人々は「オン」な状態と呼び、プライベートな時の彼を「オフ」な状態と呼んだそうな。
本編とは真逆に、全編モノクロで撮影されたドキュメンタリー(今風に言うならメイキング)には無表情どころかとても表情豊かなオフなキートンが映し出されている。
本編は25分ほどのカラー作品。一方、ドキュメンタリーの方はモノクロで、本編の倍以上の55分もあるが、是非併せてご覧になって頂きたい。
ひたすら人生を走り続けてきたあなたに贈りたい作品である。
我が母の命日に記す
※YOU TUBEで「The Railrodder」、ドキュメンタリーの方は「Buster Keaton Rides Again」で検索してください。多分、ご覧いただけます。
それはトロッコに乗ったひとりの老人が、どこまでもどこまでも旅を続けるというもの。どこへ向かっているのか、美しい風景の中をひたすらトロッコは走り続ける。平原を抜け山を越え谷を越え、そして川を渡り、大都会の駅を通り抜け、トンネルを抜けて辿り着いた場所は...
途中から観だしたこの映画にいつしか釘づけとなってしまい、気がつけば何故か涙がこぼれていた。
この時はまだこの主人公の老人が、三大喜劇スターのひとり、バスター・キートンであることすら分からなかったのだが、その無表情な顔つきと、様々に移ろいゆく風景が対照的で自分にとっての忘れられない映画のひとつになった。
初見から数十年が経ち、ようやくそれが「The Railrodder」(邦題:キートンの線路工夫)という短編映画だと知り、今改めてそれを観ると高校生の頃とはまた違った感慨を抱いた。実質的にこの作品がキートンの遺作となったようだが、自分もその歳に限りなく近づいてしまった訳で、若い頃に受けた印象と違うのは当然である。そしてキートンがこの映画を作った理由も今になって何となく分かる気がした。表面はコメディを装ってはいるが、人生の深奥を捉えたドラマなのではないかと勝手に解釈している(結局人は変わらない。変わるのは周りの方なのだ。狭いトロッコの上で何度もバタバタするのは、周りの環境が変化するため。でも、結局は変わらないのだ)。
なんでもこの時、キートンは体調がすぐれなかったようだが(公開の翌年に亡くなっている)、若いスタッフたちと精力的に議論し、何度もリハーサルを行っている姿が並行して撮影されたドキュメンタリー映画「Buster Keaton Rides Again」として製作されている。その中には69歳の誕生日を皆で祝うシーンや、ロケ地となったカナダ各地でのファンとの交流も収められている。
映画では常に「無表情」なキートンを周りの人々は「オン」な状態と呼び、プライベートな時の彼を「オフ」な状態と呼んだそうな。
本編とは真逆に、全編モノクロで撮影されたドキュメンタリー(今風に言うならメイキング)には無表情どころかとても表情豊かなオフなキートンが映し出されている。
本編は25分ほどのカラー作品。一方、ドキュメンタリーの方はモノクロで、本編の倍以上の55分もあるが、是非併せてご覧になって頂きたい。
ひたすら人生を走り続けてきたあなたに贈りたい作品である。
我が母の命日に記す
※YOU TUBEで「The Railrodder」、ドキュメンタリーの方は「Buster Keaton Rides Again」で検索してください。多分、ご覧いただけます。
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コメント
過充電というやつでしょうか。
少し放出しないと身体に惡い?ようです。
また暫くの間、駄文の擲り書きにお付き合いください。